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手塚治虫 著「ダスト18」、「ダスト8 (1), (2)」の感想 [智花ウォッチング]

手塚治虫さんの作品「ダスト18」と「ダスト8」(どちらも漫画です)を読みました。この作品は、最近観た舞台「悪魔と天使」の原作なので、舞台鑑賞と合わせて読むことで鑑賞を深めたいと思いました。

まず、「ダスト18」と「ダスト8」の違い(関係)を説明します。「ダスト18」は「週刊少年サンデー」の1972年1月9日号~5月14日号に連載されたものです。元々の構想では全部で18編のストーリー(アンソロジー)になる予定でしたが、この連載は全くの不評でわずか6編のストーリー(エピソード)を掲載したところで連載中止になってしまいました。これは単行本化はされず、後年内容を改変してタイトルも「ダスト8」と改題された上で、<<手塚治虫漫画全集>>に二分冊で収録されています。こちらには、全部で8つのエピソードが収録され、結末も変わっています。「ダスト8」第1巻は1979年2月、第2巻が1981年11月に出版されています。昨年(2018年)にこちらも手塚治虫生誕90周年を記念して「ダスト18」が初単行本化されて出版されました。舞台「悪魔と天使」の会場に、「ダスト18」の方が売られていたのを買いました。

次に、この作品のあらすじを紹介します。<<以下ネタバレあり!!>>
飛行機事故が起きて、全員死ぬはずだったのが、飛行機が「生命(いのち)の山」にぶつかってそのカケラ(生命(いのち)の石)が20人(ダスト8では10人)に降り注いだためにその20人(10人)の命が助かることになります。この生命の山のある場所は、天国や極楽とも呼ばれている場所で、本来飛行機を含めて人間がアクセスできない場所なのに何かの間違いで、迷い込んだということです。また、この場所は人間が死んだらその魂が辿り着く場所で、また人間が生まれる時もその魂がここから出ていくという設定になっています。

生き残った20人(10人)の内の二人(音羽さつきと神田岬)が事故の後意識を取り戻し、この生命の山がある場所にたどり着くのですが、この場所のボス(神様?)から、残りの18人(8人)の生命の石を取り返して来たら命を助けてやると言われます。しかしそうすると、その18人(8人)は死んでしまうことになることから、最終的には二人はこの命令を拒否することになり、二人はその場で死んでしまいます。その後、二人が持っていた生命の石がその場にいた二人のキキモラに与えられ(姿形はさつきと岬になって)、生き残った人たちの生命の石の回収に向かいます。キキモラというのは、魂だけの存在なんですが、生命の石を与えられると人間の姿形になります。但し、このキキモラは超能力を持っていて普通の人間では、生命の石を奪われるのを阻止できないという設定です。

このキキモラたちが生命の石を奪いに来た時に、つまり死に直面した時に人間たちが示す反応は様々で、あくまでの死にたくないと生に執着する者、これだけはやって死にたいので石の返却は少し待って欲しいと頼む者、人生に絶望したので返却に素直に応じる者、などがいます。一人特異なのは、科学者で生命の石を科学的に研究し、また石を削ってその一部をコンピュータに与えて、意識を目覚めさせるという人物も出て来ます。このような極限状態を設定して、人間たちの生と死をめぐるドラマを描くということがこの作品の狙いではないかと思います。

結末が「ダスト18」と「ダスト8」では異なっています。「ダスト18」では、岬の姿形をしたキキモラがエリ子という少女(上述の科学者の娘)と愛し合うことになり、このエリ子が白血病で死んでしまった時に自分も自ら命を絶つという結末です。これは途中での連載打ち切りのための予定外の結末だと思います。最後、ボスの命令に反して、キキモラが生命の石を使ってさつきと岬とエリ子は生き返らせるという風にして終わります。

「ダスト8」の方は、エリ子が飛行機事故で(生命の石のおかげで)生き残った女性の娘という設定ですが、キキモラが既に亡くなっていたお母さんの石を使ってエリ子を病気から救うということを除いて、全ての生命の石を回収することに成功する(石を奪われたエリ子以外の7人は死んでしまう)のですが、石の存在を多くの人間に知られてしまったことがまずいとボスが判断して、時間を戻して飛行機事故がなかったことにしてしまうというのが結末です。

最後に感想を少し書くと、この作品が連載中止になった理由が分かる気がします。少年誌にはテーマが重すぎるし、ほぼ全ての生存者が死んでしまうという結末も希望を持てないものです。大人の私が読んでも、人間ドラマがそこそこ面白いという程度でした。登場人物に感情移入しにくい感じもあります。考えてみると、これまで手塚作品はそこそこ読んでますが、どうも手塚さんとは波長が合わないというか、夢中になって読んだ作品はないように思います。この作品が面白かったら、「火の鳥」や「ブラックジャック」をちゃんと読んでみようかと思ったのですが、当面延期します。これに関連して「悪魔と天使」の感想は別記事で書きます。
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